Radio Active Cafe べこらぼ仙台、仙台市青葉区角五郎に3/11 OPEN、明日の河北新報夕刊で紹介予定

これまで、大学や企業などから、受託研究や依頼の形で放射能測定業務を請け負っておりましたが、一般の方からの問い合わせも多いため、新たにお店を開くことになりました。
先日、河北新報さんの取材を受けたのですが、明日の夕刊に掲載が決まったそうで、今から紹介しておきます。

Radio Active Cafe べこらぼ仙台
住所:〒980-0874 仙台市青葉区角五郎1−6−9
TEL:022-398-7630

「Cafe」という名前の通り、お茶っこでも呑みながら、線量計の使い方や選び方、効果的な除染の方法、自治体への要望、などといった相談に答えられればと思います。

お店の正式OPENは、新たな門出にふさわしい、3月11日です。
と言いながら、現在でも受託業務はこれまで通り随時受付しておりますが、現在引っ越しでバタバタしており、ご迷惑をおかけしてすみません。
今後とも、震災復興にあたって放射能対策のお助けをさせていただければと思います。

なお、前日の3月10日の昼に、いつも放射能対策活動を応援してくださっている皆さんをお招きして、ささやかではありますが仙台駅前の和食のお店でオープニングパーティーを開催する予定でおります。
わたしの活動に賛同していただいている方でしたら参加大歓迎ですので、このblogのコメント、もしくはtwitterの@kaztsudaまで、お気軽にご連絡いただければと思います。

大崎八幡宮のどんと祭のお焚き上げの灰の放射性セシウム濃度

昨年末から、宮城県内各地の薪を燃やした後の灰を測っております。
そこで気になるのが、どんと祭で正月飾りなどをお焚き上げで燃やした後の灰です。
どの程度放射性物質が濃縮されているでしょうか?
どんと祭りで燃やすものというと、前の年に買ったお札、暮れに買った正月飾りのしめ縄や松飾りなど。
お札は震災前につくられたものですし、しめ縄の原料は稲わら、松飾りも夏に葉が生え替わった新しいものでしょうから、あまり放射性物質は含まれていないんじゃないか?、とも思います。
でも、測ってみないとわかりませんよね。事前に燃焼試験を行えば大丈夫かどうかわかると思うのですが、行政がそのような調査を行ったという話は全く聞かないうちに、どんと祭を迎えてしまいました。

いいでしょう、わたしが燃やした後の灰を測ってみましょう!

どんと祭り当日、我が家は近所の大崎八幡宮に、お札と黄鮒を燃やしにいきました。
どちらも、震災前につくられて屋内に保管していたものなので、燃やしても問題ないはずですが。

しかし、スゴイ山です。風が強い日は、火の子が遠くまで飛んで行くのが見えるんですよね。
この煙を頭からかぶれば、今年1年は風邪をひかない、と言われており、みんな火の周りに寄ります。
火のすぐそばは、裸参りの方々がグルグル回ります。この写真を撮った時はちょうど、地元の有名企業の団体さんが来ているところでした。

さて翌日の朝、灰を採取しに行ってみましたが。。。

なんとまだ燃えています。しかも朝になっても燃やしにくる人が次々に来ていました。

しかしこの灰、よく見ると針金だの杯だの、わけのわからないものも混じっています。なんなんだいったい?

この灰の周囲の空間線量は0.07μSv/h程度だったのに、この広がっている灰の上で測ると、0.10μSv/h程度に上昇しました。
確かにこの灰のあたりには、放射性物質が若干含まれているようです。
この灰を採取して測ってみました。

測定に使用した機器は1inch NaI(Tl)スペクトロメーター(テクノAP TN100)、700mlマリネリ容器で60分測定しました。試料の量は248gでした。
さて結果は!

  • 134Cs : 87Bq/kg
  • 137Cs :116Bq/kg

と、放射性セシウム合計では概ね200Bq/kgでした。
これは、仙台市内の平均的な土壌の放射性セシウムの濃度とほぼ同じ程度です。

考えてみれば神社の境内の0.07μSv/hの線量は、かなり雨で洗い流された場所で測った値であり、仙台市内の土の上ではこれは概ね0.10μSv/h程度になります。
土の放射性セシウム濃度と同じ程度の灰が広がっているのだから、その上で空間線量を測っても土の上とほぼ同じ程度の値がでるわけですね。
灰の上で測った時に一瞬、「げげ、上がった!」と少しビックリしましたが、その数値をよく考えてみればそれほど恐れることはありませんでした。

どんと祭で燃やした放射性物質が拡散するのでは?、と心配される方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも仙台市内では灰自体が土とほぼ同じ放射性セシウム濃度ですので、どんと祭の煙も土埃が飛ぶ場合と同程度の飛散量と思われます。
福島県内など、どんと祭を中止したところも多いようですが、燃やすものを考えれば問題なかったのでは?、と思います。
心配なら事前に燃焼試験をして白黒つけておけばよかったのにね。

さてオマケ。裸参りの保存会のみなさんです。

毎年見てますが、カッコいい!

元天賞苑の八幡杜の館から出発する際の記念写真。

残念ながら川崎町に移転した天賞酒造はこの震災で廃業されてしまいましたが、この文化は今後も続けていきたいものです。

薪ストーブや風呂釜で、雨ざらしになっていた薪にはご注意を。薪の放射性物質が灰には200倍に濃縮されます。

マスコミなどでも報道されていますが、宮城県内の放射線量の高い地域で、薪ストーブの灰に放射性物質が非常に濃縮された例が報告されております。
twitterなどでつてをたどりながら、宮城県内各地から薪ストーブの灰のサンプルを集めてその放射性セシウム濃度を測定し、どういった薪の使い方をしていたか聞き取りしながら調査してみました。
その結果、原発事故で放射性物質が比較的多く降り注いだ地域にお住まいの、ストーブやお風呂などで薪燃料を使用しているご家庭では、震災後雨にあたっていた薪の使用は絶対に避けるべきであることがわかりました。
また薪を燃やした際に出た灰についても、放射性濃度が低い場合は家庭ゴミとして出せますが、畑に撒くことは絶対に避け、雨をかぶっていた薪を使用していた場合は国の指針が固まるまで、一斗缶など金属製の容器で密封し雨水などには触れない状況で保管していてください。

まず以下が測定結果、単位は放射性セシウム134Csと137Csの総量です。

  • 栗原市文字:30,000Bq/kg(灰、震災後山の中に置かれていた薪を使用)
  • 栗原市耕英:19,000Bq/kg(灰、震災後しばらく雨さらしになっていた廃材を使用)
  • 富谷町:6,000Bq/kg(灰、焚き付けに震災後雨さらしの廃材や小枝を使用)
  • 蔵王町遠刈田:5,500Bq/kg(灰、震災後雨を被った薪を使用)
  • 丸森町耕野:18,000Bq/kg (灰、震災後しばらく雨さらしになっていた薪を使用)
  • 丸森町筆甫:101,000Bq/kg (灰、震災後しばらく山の中で放置されていた薪を使用)
  • 丸森町筆甫: 27,000Bq/kg (灰、屋内保管の薪と山元町で雨さらしになっていた薪を使用)
  • 丸森町筆甫: 12,000Bq/kg (煤、屋内保管の薪と山元町で雨さらしになっていた薪を使用)

測定に当たっては、試料を100mlのU8容器に入れ、1inch NaIスペクトロサーベイメーターを用い、東北大学ゲルマニウム半導体検出器で校正を行っております。

環境庁からの指針で、最終処分場に埋設可能な焼却灰の規制値は放射性セシウム総量で8000Bq/kg以下に設定されております。
しかし、宮城県内で比較的線量の高い北部と南部の地域で、震災後屋外で雨を被ってしまった薪を使用していると、薪ストーブで焼却して出る灰の放射性セシウムの量は、この規制値は軽く超えてしまっています。
通常の生活を行う上では特別な対策の必要のない仙台市近郊でも、薪の状況によっては8000Bq/kgを超えかねない状況です。
例えば富谷町のお宅の例では、薪自体は2年前に伐採された木を雨の被らない軒下に乾燥保管していたものでほとんど放射性物質が付着していないと思われますが、焚き付けに庭に放置していた小枝や廃材を用いており、これだけでも6,000Bq/kgに達してしまいました。
最後の例では、灰だけでなく、煙突に付着する煤にも放射性セシウムが含まれていることがわかりました。
煤は灰よりも軽いこともあり、サーベイメーターではあまり反応はありませんが、重量あたりに直すと灰の半分程度まで放射性セシウムを含んでいるようです。
また同様に放射性セシウムは、煙としても外部に拡散されているものと思われます。

また、農業や家庭菜園を行っているばあい、薪の焼却灰はよいミネラル分になるため、肥料として畑に撒くことが多いと思いますが、この際に肥料に使える規制値は400Bq/kgに設定されております。
肥料は繰り返し施肥されるものなので、食品より高い規制値が設定されております。
これらの灰はどれも、肥料としても全く使えないものばかりです。
特に灰ですと、セシウムが水に非常に溶けやすい状況になっておりますので、畑に撒いたりすると容易に再拡散が始まってしまいます。

これだけアブナイことになっているのに国からは何も指針や規制は出ていないのか、実は既に通達が出ております。
林野庁が実験したところ、薪の放射性物質の濃度が燃やした後に灰になると200倍に濃縮するという結果になりました。これを受けて、焼却灰が8000Bq/kgを超えないための薪の規制値として40Bq/kgが設定され、これを超える薪の生産や流通や使用を控える旨の通達が11/2に出ております。
この40Bq/kgという規制値は、食品に比べてもかなり厳しいものですが、薪の状態では全く問題ないものでも、燃焼の際に200倍にも濃縮してしまうという事情から設定されたものです。
詳しい経緯などは、以下の林野庁のweb siteをご覧ください。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shihyouti-index.html

またこの際、キノコ栽培の原木に使用できる規制値も150Bq/kgに設定されました。
これに伴い、先日11/30に宮城県が県内の一部の地域の原木を検査し、その結果が林業振興課のホームページで公開されております。

http://www.pref.miyagi.jp/ringyo-sk/

この結果では原木キノコの規制値に合わせて検査されておりますが、薪の規制値に読み替えてみますと、宮城県内のほとんどの地域で生産された薪に関して、使用を慎重に行わなければならないことがわかると思います。
各地域の薪を薪ストーブの燃料として使った場合、この放射性セシウム濃度の200倍したものが薪ストーブの灰として検出される、と考えると、今回の調査結果とほぼ一致しています。

参考までに、サーベイメーターで簡便に8000Bq/kgを超えるかどうか判断する基準を調べてみたところ、灰を1kgほどビニール袋に入れたものの上にサーベイメーターを直に置いて測定した場合、空間線量に比べて0.20μS/hを超えると要注意、ということがわかりました。
例えば、部屋の中の空間線量が0.05μSv/hだった場合、灰に直置きして測ってみて0.25μS/hを超えるようだと、8000Bq/kgを超えている可能性が高いです。

繰り返しますが、原発事故で放射性物質が比較的多く降り注いだ地域にお住まいの、ストーブやお風呂などで薪燃料を使用しているご家庭では、震災後雨にあたっていた薪の使用は絶対に避けてください。
また薪を燃やした際に出た灰についても、放射性濃度が低い場合は家庭ゴミとして出せますが、畑に撒くことは絶対に避け、雨をかぶっていた薪を使用していた場合は国の指針が固まるまで、一斗缶など金属製の容器で密封し雨水などには触れない状況で保管していてください。

混乱する給食食材検査の現場

つい先日、宮城県の市町村の中で初めて学校給食の食材の放射線検査を始めた栗原市
地元の市民団体主催で、この食材の放射線の検査装置の見学会を行うという情報を、栗原市の災害復興を紹介している知人のblogで知りました。
http://ameblo.jp/mtsuda0506/entry-11093572475.html

実はこの栗原市の学校給食の食材検査で、宮城県産のジャガイモが先日ひっかかっております。

http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20111120ddlk04040037000c.html

東日本大震災:県産ジャガイモからセシウムを検出−−栗原・給食食材 /宮城
 栗原市は18日夜、市内の単独調理校1校で17日の給食に使う予定だった県産ジャガイモを前日の16日に検査したところ、1キロ当たり23・68ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。
 食品衛生法上の暫定規制値は同500ベクレルだが、同市は児童生徒と保護者に不安を与えることを考慮し、このジャガイモ計2キロ(60食分)を使用せず、「不検出」と確認した北海道産のジャガイモを使用した。
 同教委は東京電力福島第1原発事故により、今月1日から小中学校や幼保育園の給食食材の前日検査と調理済み料理の当日検査を順次行っている。当初2週分の検査ではすべて不検出だった。【小原博人】
毎日新聞 2011年11月20日 地方版

しかしながら、(財)食品流通構造改善促進機構で運営する食材の放射性物質検査データベース、いわゆる「yasaikensa」では、非流通品の原発近辺で採取されたモニターリング検査まで含めても、ジャガイモからは放射性セシウムはほとんど全くと言ってよいほど検出はされていないのです。
http://yasaikensa.cloudapp.net/product.aspx?product=%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%a2&category=%E9%87%8E%E8%8F%9C%E9%A1%9E

さてこれはどういうことだ?、宮城県原発周辺よりも高度に汚染された地域がある??
実は、食品に元々含まれているカリウムの一部の放射性カリウムを、機器が誤ってセシウムと誤検出してしまう現象があります。
この現象は、例えば高エネルギー物理学研究所教授の野尻先生のblog記事で解説されています。
http://nojirimiho.exblog.jp/14725078/
ここでは「やさしお」を使っていますが、この成分はカリウム、ナトリウム、塩素だけで、本来セシウムは全く含まれていないはずです。しかし「やさしお」測定するとセシウムが含まれていると狂った表示をする現象が取り上げられています。

実は栗原市の学校給食の食材検査で使われている機器は、この野尻先生のblog記事で解説されているものと同じLB2045ですが、ここで紹介されている「スピルオーバコレクション」という機能で調整することにより、このカリウムによる誤検出を避けることができます。
この具体的な設定方法は、メーカーから10月末にマニュアルの改訂版が発表されており、その最後に記載されています。しかし、栗原市にこの機器が納品されたのは、9月末のことです。
測定機器の設定がうまくいっていないため、本来はほとんど放射性セシウムが含まれていないのに、カリウムにより誤検出されてしまった、という可能性はありえます。
ちょうどジャガイモは元々カリウムが多い食品です。100g当たり410mg含まれています。

さて、では実際のところどうなっているか?、現場で現物を見て確認したほうが早い、と、行ってきた次第です。

志波姫にある栗原市南部給食センター。場所は田んぼの真ん中です ^^

中では、こんなでっかい釜で調理します。

と、こちらも面白そうなのですが、今回はパスして、、、

これが検査装置です。周りに食材を刻んで加工する設備などがあります。

さて、測定中の計測画面を拝見しますと。。。

あ!、測っているのは放射性ヨウ素放射性セシウムだけで、放射性カリウムがありません。
これで、検査でひっかかった23.68Bq/kgのジャガイモは、誤検出である可能性が極めて高い、ということが判明しました ^^

さっそく見学会に同席していた栗原市危機管理室の室長さんとお話をしたところ、カリウムを多く含む食品が放射性セシウムとして誤検出してしまう現象があることは、把握しておられました。
ただ、メーカーからマニュアルの改訂版としてその対策が通知されていることについて、メーカーからは何も連絡を受けていないとのことでした。
とりあえず、突然現れたどこの馬の骨とも知らないわたしが勝手に栗原市の検査機器のセッティングを治していくわけにもいかず ^^ メーカーに問い合わせてもらうようお伝えしておきました。
このご時世で、納期が数カ月待ちと非常に引きあいの多い人気の機器ですので、メーカーのほうもアフターフォローまでなかなか手が回ってないのかもしれません。本来は言い訳にはならないのですが。。。

さてそれにしても、まだひっかかる点があります。
この23.68Bq/kgと誤検出していたジャガイモですが、本来はどの程度の数字だったんでしょうか?
おそらくはほとんどゼロかと思われますが、本来はこの簡易検査機器は一次検査で怪しいものを抜き出す目的のものですので、この後より精密なゲルマニウム半導体による検査を行えば、白黒がはっきりしていたはずです。
が、栗原市としては、このジャガイモを給食で使うことをやめただけで、風評被害を避けるためにこの産地も公開しておりませんし、精密な検査できちんと判別することもしておりませんでした。
結果としてこのままでは、宮城県のどこかの地方では全国的にも例がないほど高い放射性セシウムを含むジャガイモが採れたらしい、という風評だけが残ってしまいます。
もし、この時のジャガイモがまだ残っているようでしたら、カリウムの誤検出の対策済みの設定で再度測定し、念のためゲルマニウム半導体検出器ででも測定して、ジャガイモは濡れ衣であったことを証明してあげたいところです。

テクノエーピー社製 Mini スペクトル線量計TA100の実力を探る

最近、意欲的な放射線測定器を開発しているテクノエーピー社、最近発売されたばかりのCdTe半導体センサーを採用したスペクトルメーターTA100を試す機会がありましたので、紹介します。
http://www.measureworks.co.jp/TA100.html
20万円を切る価格のスペクトルメーター、おそらく世界最安だと思います。
よーし、おれが最初だ!、と思ったのですが、線源を使わせてもらうのにモタモタしているうちに、早野先生に先を越されてしまいました ^^
22Na: http://twitpic.com/6kruhi
60Co: http://twitpic.com/6krx2d
137Cs: http://twitpic.com/6krzkb
しかし。。。これ、137Cs以外はかなりナヨっちー線源使ってません?

ということで、活きのいいやつで試してみました!

まずは「野性」環境下のアイソトープ飯館村のお土産で試してみましょう。

いやぁこの数値は、いつ見ても心拍数上がります。
さすがにこれだけタップリあると、ものの数分でビシッときれいなスペクトルが表示され、134Csと137Csの核種のピークがバッチリ分離されます。

うーん、素晴らしい!
こんな武器が、20万円を切る価格で手に入るなんて、時代は変わったものです。

さてお次は色々な密封線源、まずは基本の137Cs。

んー、なかなか元気なもの選んできましたね。さてこいつのスペクトルは?

ピークが低エネルギー側に多少だらけ、さらに低いところに影のようにコンプトンエッジの肩が出る、これがCdTeの特徴です。
134Csと137Csのうち、単品だとこうなります。
あと10年くらいしたら、見えるのはこういう感じになるんでしょうね。

お次は22Na。

ギョギョギョ、こいつは活きが良すぎます!
さすがに3桁はアブナイので、慌てて撮ってちょっとピン惚けになっちゃいました。

あれ?、511keVの対消滅を拾って、18Fと同定されちゃいました。
1275keVのピークがこんなビシっと出ているのに。。。
もしかして、β+崩壊する核種、全部18Fになっちゃう??
それと、100μSv/h超える環境だと、右上の線量がスケールアウトしちゃうんですね。
メーカーからしてみると「イジワル言わないでよ」かもしれませんけど ^^
あと、なんでだか知りませんが、134Csのピークがあることになってます。。。
(そんなのいったいどこに???)

さて、お次も基本の60Co。

1173keVと1333keVの二つのピークがしっかり出ています。
ただ、1333keVのコンプトンエッジと、1173keVのピークが重なっているのが、ちょっと注意です。
で、ここにも、どういうわけか134Csのピークがあることになってます。。。

125Eu

多少暴れ気味ですが、122keV, 245keV, 344keVのピークがしっかり出ています。
が、同定されたのはなぜか212Pb ^^

ということで、結晶の小さいCdTe特有のコンプトンエッジの癖が出るものの、各核種のピークはかなりしっかり見極めることができそうです。
でも核種同定機能は、「もうちょっとがんばりましょう」かなぁ?
メーカーからしてみれば、「こんな線源で試さないでください」ってことかもしれませんが ^^
まぁ実用上は、これだけ134Csと137Csがキッチリ分かれて見えれば万々歳、ちょーお買い得の逸品だと思います。

内部被曝と外部被曝と、どちらが恐い?

先日の東北大理学部物理教室の田村裕和先生の出前授業で解説された、内部被曝外部被曝定量的に比較した内容です。

若干、数字を仙台市内に合わせてアレンジして、原発事故由来の放射線外部被曝原発事故由来の放射性物質を含む食物を摂取することによる内部被曝と、リスク評価を定量的に比較してみます。
リスク評価としてはICPR勧告の、100mSvの被曝量で生涯致死発癌率が、50歳で0.5%、10歳で2%上昇、100mSv以下の被曝量では閾値無しで比例する、という方式をここでは採用します。
「いや、それは間違っている!」と主張される方もいらっしゃると思いますが、すみませんが勉強不足のわたくしは定量的に評価する方法を知りませんので、適時置き換えて計算してみてください ^^;;;;

外部被曝
現在の空間線量は0.12μSv/h、事故前の空間線量は0.05μSv/hとします。
汚染度としてはかなり低く、原発事故直後でも外出時にマスクなどする人などほとんどいなかったレベルのものです。
一日の中で8時間屋外で活動し、残りは屋内で過ごす、屋内の線量は屋外の半分、とします。
年間の総被曝量は

(0.12-0.05) (μSv/h) × ( 1×8 + 1/2 × 16) × 365 = 0.41 (mSv)

これはICRP勧告のLNT仮説に基づくと、10歳の子供に対する一生の間の致死発癌率を0.008%上昇させるリスクに相当します。

内部被曝
食物の放射性セシウム総量の基準値は500Bq/kgですが、この1/10に相当する食物を毎日0.6kg食べ続けるとします。
134Csと137Csの割合は1:1でそれぞれ25Bq/kgづつ。
現在流通している食物のほとんどは数Bq/kg以下の「不検出」の多い中、基準値以下ではあるものの「ちょっと気持ち悪い」レベルの汚染度を仮定します。
ちなみに小さめのお茶碗一杯分のご飯が110g、大きめのお茶碗のご飯が150gだそうです。

また、経口摂取の場合の実効線量計数を134Csが1.9×10-8 Sv/Bq、137Csが1.3×10-8 Sv/Bqとします。

年間の総被曝量は、

( 25 (Bq/kg) × 1.9×10-8 (Sv/Bq) + 25 (Bq/kg) × 1.3×10-8) ×
0.6 (kg) × 365 = 0.18 (mSv)

これはICRP勧告のLNT仮説に基づくと、10歳の子供に対する一生の間の致死発癌率を0.0036%上昇させるリスクに相当します。

外部被曝内部被曝のリスク比較:

実はここで、外部被曝のリスクはかなり低め、事故と関係なくてもこの程度の空間線量の場所は西日本でも普通に存在する、程度の数字を想定しています。
その一方で、内部被曝のリスクはかなり高め、「1ベクレルであっても身体に入れるのはイヤ」という人のために可能な限り汚染度の低いお米をつくろうと努力している状況で、これだけの米が検出されることはめったにないような高い数字を想定しています。

にもかかわらず、外部被曝のリスクは、内部被曝の倍という計算結果なのです。

実際には外部被曝内部被曝も、両方ともあまりにも低いリスクなので見落としていましたが、こうやって比較してみると目から鱗でした。

空間線量から土壌の汚染度を逆算する換算式

ようやく文科省から福島県の土壌メッシュ調査の結果が発表されました。
このために全国の大学から人も機材も駆り出されて研究ができなかったのですが、、、
というか、原子核物理関連実験施設が軒並み被災してしまって実験ができないのでこの調査に協力した、というのが正確なところかもしれませんが ^^

で、この調査で土壌を採取する際に必ずその場所の空間線量を測定していたため、この成果で得られた結果として、地上1mでの空間線量(μSv/h)から土壌の表面汚染(Bq/m2)の簡易的な換算式が得られました。

  • 134Cs : 4.56×10-6 μSv/h / Bq/m2
  • 137Cs : 1.66×10-6 μSv/h / Bq/m2

本来は何ヶ所から土壌を採取してよく混合させて測らないとならないのですが、地上1mの空間線量の測り方ですとそれがうまく平均化される結果になり、シロウトさんでも確実な値が出しやすいそうです。

震災直後は134Cs:137Csの比は1:1くらいでしたが、今は134Csの半減期2年が効いてきていて、0.8:1くらいだそうです。
とりあえず1:1と仮定すると、空間線量のμSv/hの値から6.22×10-6を割ると、134Cs+137Cs総量の土壌表面のベクレル数が得られる計算になります。
土壌を採取する際は、降った雨がまだら状になっている場合など採取する場所によってかなり汚染度の違いが激しく違い、例えば文科省プロトコールでは、四角の中にバッテンを引いて5ヶ所から採取し、よく撹拌したものを測定すること、などとなっています。
シロウトさんがこういった操作を行うのも大変面倒なので、それよりは空間線量を正確に測って、バックグランドとの差を取り汚染度を調べたほうが確実な値が出るそうです。
以上、、東北大理学部物理教室田村研の方から教えていただいた話でした。