陸前高田の松の薪の皮から検出された放射性物質から陸前高田の放射性物質の降下量を見積もる

京都の大文字焼きで焼こうとした陸前高田の松の薪を島津テクノリサーチ社が分析した結果、薪の松の皮から検出された137Csが588Bq/kg、134Csが542Bq/kg、だそうです。
この陸前高田の薪の状態がどんなもんであったか、堀田さんが保存会に聞き取り調査してくれたのですが(例えば:http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1313141548#CID1313482496)この松の皮の厚さは5mm程度だそうです。
松の薪の比重は乾燥度にもよるが0.5前後だそう(ここでは0.6とも見積もっていますが)なので、皮はそれよりかなり軽いので比重を0.2前後と見積もります。
となると、松の皮を広げた時の1kgあたりの面積は、1.0m2/kg。

ただ、松は津波でなぎ倒されていた状況で、片面の一部にしか放射性物質が付着しておらず、また丸い松の幹の形状を考えると、松の表面積を広げた状態の比では1/3程度付着していると仮定する。
また、雨などで松の表面に付着した放射性物質の1/2は雨で流れていると仮定する。

となると、陸前高田津波になぎ倒された松に降下した137Csの密度は、

588 (Bq/kg) ÷ 1.0 (m2/kg) ÷1/3 ÷1/2 = 3528 (Bq/m2)

東京都に降下した137Csの密度が7000Bq/m2ですので、陸前高田は東京都の半分程度、という計算になります。
陸前高田市の空間線量が0.10μSv/h弱と非常に低いことを考えると、こんなもんじゃないですかねえ。

ただ報道によると、松の薪の「500本すべてから表皮のかけら計1キロ分を集め、検査した」( http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110813ddm001040109000c.html )というので、
松の皮の本当に表面近くの薄く軽いところを使ってるような感じで、検査に使った部分の比重はもっと軽いようなきもします??
ちなみに他の県庁所在地での137Csの降下量は、盛岡が800Bq/m2、宇都宮が2800Bq/m2なので、「東日本一般の低い汚染度」と考えて差し支えないと思われます。

宮城県三陸沿岸部の放射線調査の成果

今月最初に書いた、以下の宮城県放射線量調査のその後です。

[放射能]宮城県放射線量調査
http://d.hatena.ne.jp/kaztsuda/20110803/1312388582

元々は南三陸町から、津波で甚大な被害を受けて放射線の調査まで手が回らないから、と大学に依頼があったものですが、結果として牡鹿半島から気仙沼まで、宮城県沿岸部の放射能汚染は低く、概ね仙台市などと同じレベルかそれより低いくらい、ただし気仙沼の山間部で若干高い傾向が見られる、というものでした。

この結果を持って南三陸町の町長さんが青森県三戸町まで直談判に行き、「三陸沿岸部の放射線の汚染は低い」という科学的根拠を持って、南三陸町の大量のガレキの焼却処理を三戸町が引き受けてくださったそうです。

以下、宮城県の地元紙、河北新報のそのニュースです。
三陸のがれき一部 青森・三戸で処理 来週にも搬出開始
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110806_16.htm

宮城県南三陸町は、東日本大震災で発生したがれきの一部を、青森県三戸町の民間最終処分場で処理することを決めた。県の2次仮置き場が決まらず、町内の1次仮置き場が飽和状態となっているため、緊急的措置として実施する。来週にも搬出を始める。
 がれきは1次仮置き場で大まかに選別した上で運び出す。1日最大で150トンを見込む。
 震災前、南三陸町は一般ごみを気仙沼市で焼却後、灰を三戸町の処分場で処理していた。三戸町が業者を通じ、災害廃棄物の受け入れを打診していた。
 南三陸町では町内25カ所に1次仮置き場を設置した。環境省によると、同町のがれき総量は推計64万トンで、既に29万トンが運び込まれている。
 県は気仙沼・南三陸ブロックの2次仮置き場として、気仙沼市本吉町小泉地区を候補地に挙げたが、地元との調整が難航している。
 南三陸町の佐藤仁町長は「一部でも町独自でがれきを処理することで、小泉地区の負担軽減を図りたい」と話している。
2011年08月06日土曜日

放射性物質福島第一原発からどうやって拡散したかは、色々な研究者がシミュレーションを建てている最中ですが、その中には、放射性プルームが原発から太平洋上空を飛んできて牡鹿半島に上陸し、北上連峰沿いに三陸沿岸を北上して一関まで達した、というものもあるようです。
太平洋上空を飛んできたなんてどうやって確認したのか謎ですが、この結果が週刊誌や新聞などで何度か取り上げられているせいか、「三陸沿岸部の放射線汚染は酷い」、と誤解している人もいるようで、陸前高田の松の騒ぎになった?、のかと想像しております。
実測値でこのように放射能汚染は低いという結果が出ている、という科学的根拠をもってあたれば、他県の自治体に対しても十分納得していただくことができ、停滞しているガレキの焼却処理を進めることができたという例を知っていただけに、陸前高田の松の騒ぎは非常に残念な結果でした。

ところで南三陸町の近隣の市町村の各所についても、計測の途中で「あそこの牧場の牧草が放射能汚染で検査でひっかかった」という話を聞き、その牧場も実際に計測してきました。
実際にはこの牧場の空間線量は0.20μSv/hと、確かに平野部に比べると若干高いものの、それほど健康に害を与えるようなレベルではありませんでした。
おそらく土壌に降ったばかりのセシウムの牧草への移行係数が比較的高い(0.15程度)こともあり、新芽の牧草が運悪くひっかかってしまったのでは?、と想像しています。
しかし別の市町村でもその牧場の牧草が検査でひっかかったことは話題になっており、「あそこの牧草が放射能でひっかかった」→「あそこはかなり汚染されているに違いない」という話を実際に聞かされました。
「いや、その牧場に実際に行って測ってみましたが、確かに平地と比べると若干高いものの、たいした線量ではありませんでした」と説明はしてみても、すぐには納得してくれなさそうな様子でした。
一度付きまとってしまった噂を消し去るのは、並大抵の努力ではできないんだなぁ、と実感した次第です。

ぼくはこの激安サーベイメーター、「シリコンガイガー」と名付けたいと思います

前回カタログスペックだけからレビューした、フリスクケース推奨の激安サーベイメーターキットですが、公的機関による評価が載ったようです。
しかし。。。校正の結果を見ると、137Cs相当で、検出できるガンマ線の感度は、20cpm/Sv/h程度。
いわゆる「ポケットガイガー」と比べても、ちょっと感度が悪い。
ただ、ある程度線量が高い領域では、リアリニティはかなりいいですね。
結論としては、ヘンなものを拾ったりしない、という意味では、だいぶ信頼できる値を出るとは思いますが。
色々見ると、平べったいPINダイオードを8つパラで並べるなど、色々工夫してるんだなぁ、という感じはしました。
ただ、かなり線量の高い領域ではサチってる様子が見られるなど、特製としてはGM管そっくりかなぁ。

しかしこれ、ワイルドな環境を測定すること考えると、キャリブレーション134Cs+137Csを1:1に含まれる標準線源でやるのがいいんじゃないかなぁ?
だいたい今ごろはベクレル数換算で、134Cs:137Cs = 0.8:1 くらいだそうです。
震災直後は、1:1だったのが、134Csの半減期の分、ちょっと減ってきている、という話でした。

色々考えると、このSi半導体のPINダイオードを使ったサーベイメーター、「シリコンガイガー」とか読んであげたほうが、機器の特製としても機能としても、正確じゃないですかねえ?!

ポケットシンチ DoseRAE2 PRM-1200 レビュー

ポケットシンチレーター DoseRAE2 PRM-1200を入手して色々使ってみました。
実は前回の計測でもアロカTCS-171と一緒に使ってみて、色々クセなどを調べてみたのでした。
大雑把に評価すると、以下のようになります。

良い点:

  • シンチレーター方式としてはおそらく最安(実売4万5千円くらい)
  • 公的機関でも使われている(東京都がこれだそうです)
  • 電池の持ちがよく、軽い

悪い点:

  • 時定数の設定ができない
  • 計測にかなり癖がある
  • 電子ノイズに弱い

結晶の種類はCsIですが、いかんせんサイズが小さいので感度がイマイチなのは覚悟していましたが、堀場PA-1000 Radiと比べても、安定するまでちょっと時間がかかるかなぁ?、という印象です。
堀場PA-1000 Radiのほうは、小数点以下3桁まで表示するので、だんだん安定してきている様子が読めるのですが、この機種は小数点以下2桁までしか表示されないので、あとどのくらい待つ必要があるのか、ちょっとわかりにくいです。
また、時定数の設定がないのである程度待ったところで値を読むしかないのですが、どうも長時間電源を入れているとかなり長い期間の平均を取っているようで、急に線量が変化したような場合、追従がかなり遅れます。
例えば、クルマで移動しながら、急に線量が変化した場所に移って計測するような場合。
ただ、現在の線量の表示は遅れるものの、累積被曝量はきちんとカウントしていることろがなんとも謎(←それをどうやって確かめたかは、ちょっと書けない ^^)
このため、例えば学校の敷地の除染のために地面をなでながら高い線量のところを探す、という使い方には向いていないようです。

色々機能面を調べますと、元々これはサーベイメーターではなく、原子力関係の作業従事者に持たせるドシメーターとして開発されたんだろうなぁ、と思いました。
アラームとして、現在の線量の他、累積線量の二つで設定可能なのが、助かると言えば助かるのですが、、、

また、電子ノイズに弱いというのがなんともクセモノで、線量のアラームを低めに設定しておくと、思ってもいないものに反応していることがわかり、なんとも閉口します。
携帯電話はもちろん、クルマのリモコンキーにまで反応したのには、まいりました。

と、色々検討した結果、以下のような使い方ならかなり正確な値を出すことができることがわかりました。

  • 計測の際には必ず電源を入れ直す
  • 必ず5分程度待ってから値を読み取る
  • その間、線量計の近くには、ケータイ、デジカメ、GPSなどの電子機器は近づけない

いちおうこの測り方で、アロカTCS-171と比べて、10%程度の誤差でほぼ近い値は出るようです。
が。。。なんとも気難しい線量計です。
ちょっとこれを使って車載モニターリングに仕上げるには、ちょっと厳しいかなぁ?、と思いました。
雑誌やネットでは、他の線量計と比べてシンチレーターの割にだいぶ値がずれるという評価が多いようですが、単にスイッチ入れて値を読むという使い方では、それも当然かも?、と思います。
特に屋内の計測では、周りの何を拾っているかわからないので、かなり注意が必要です。
ちなみにわたしの自宅では、庭より部屋の中のほうが高いくらい ^^

しかし当然ですが、同じ値段出してポケットガイガーを買うなら、こちらのほうがはるかに信頼性の高い値を出せると思います。
ただ、この気難しさと、値段を比較すると、ちょっとオススメするにはビミョー。
公的な測定としてこの値を採用してもらう、という用途にも、かなりビミョー。
あと、例えば学校の除染のホットスポット探しのような用途には、β線の感受性の高いガイガーと併用したほうがよさそうに思います。

激安サーベイメーターキット

どこから知ったのかもう忘れてしまいましたが、こんな線量計が発売されているそうです。
http://www.radiation-watch.org/p/blog-page.html

センサーはSi半導体、PINダイオードを使った、エステーの安価な線量計と同じ方式です。
キット販売ですが、半田付けが必要な箇所はなく、ケースの工作などで動作するようです。

ただ、ちょっと気になったのが、カタログの以下の記載:

エネルギー特性:662keV〜1333keV程度

。。。えーとこれって、662keVの137Csのガンマ線のピーク、ちゃんと取れてるのかしら?
あとこのスペックでは、134Csの、605keVのピークをキャッチするのはかなり辛い。
795keVのピークは確かに取れそうなんだけど。。。

結局これ、エネルギー補正もないから、どう校正したらいいのかわからんな?
ただ、現在日本の土壌にある福島第一原発由来のアイソトープが、ほとんど137Csと134Csだけと仮定して、自然界での137Csと134Csの両者の存在確率の分布が既知ならば、実際にはかなり正確に補正できそうですね?!

まぁそういうコ難しいことはともかくとして、現在の福島第一原発由来の環境でなら、比較的信頼度の高い値がゲットできると思います。
少なくとも、小指ほどのメチャメチャちっこく感度の悪いGM管を使ったポケットガイガーを何万も出して買うよりは、はるかにマシかと ^^
ということで、この値段なら、オモチャとしてはかなり面白いと思います!
少なくとも、自分で部品揃えてつくる手間考えたら、お買い得。
販売再開されたら、わたしも注文しようと思います。ちょうどiPadも持っていることだし。

三陸沿岸津波被災地で放射能対策は必要か?

元々今回の宮城県沿岸部の放射線の測定の目的は、津波被害を受けた地域の自治体が放射線対策の必要性を検討するにあたって、大学へ調査の要請があったためでした。
宮城県内で津波の被害を受けた地域は、津波被害からの復興対応で追われ、放射線のリスク評価はどうしても後回しになってしまう傾向にあります。
実際に被災地に行っても、悪臭やハエなどのリスクのほうが急務で、放射線に対するリスクなどにはとてもかまってる場合ではない、といったところが実情のようです。

このために検証したのが、気仙沼市本吉町大谷海岸のバス停前の測定です。
元データはこちらにありますが、URL長いな ^^;;;
http://geigerdata2.appspot.com/plotter?id=agtnZWlnZXJkYXRhMnIbCxITZ2VpZ2VyZGF0YV9wbG90dGVyMhiB-gEM

結果は、バス停前では0.07μSv/hと、他の沿岸部と比べても際立って低い値でした。
他に気仙沼の港で測った際も、気仙沼市街地の津波の被害に合わなかった地域に比べて、極端に低い値になるという結果でした。
ただし、大谷海岸気仙沼港も、モロに津波を被った場所です。津波の泥の上に放射性物質が降り注いだと思われますが、その泥は撤去されていると思われます。
この近辺の沿岸部の海岸近くで津波を免れた場所と比較すると、南三陸町神割崎駐車場0.09μSv/h、南三陸町歌津泊崎荘駐車場0.09μSv/h、といった具合です。

ではこの津波の泥はどうした?、この上に降り積もって吸着された放射性物質はどこにいった?
そこで試しにこの大谷海岸道の駅のバス停前にあった、土嚢袋に積まれた津波の泥をサーベイメーターで測ってみました。
すると、このすぐそばのバス停では0.07μSv/hという値だったものが、土嚢袋は0.15μSv/hと、比較的高めの値を示しました。
ただしこの数値に限って言えば、他の地域の圃場の放射性物質の吸着具合と比べると、それほど変わらない程度です。
この土嚢袋と同じ程度の放射線量の地域は、宮城県内でも普通に見られます。

ですので個人的には、津波の被害を受けた被災地は、津波の泥に放射性物質が吸着されて、その泥かきによりいわば「既に除染済み」なため、とりわけ放射線に対するリスクを心配する必要はないだろう、という意見です。
ただ、表面に放射性物質が吸着した泥を集めたこの土嚢袋を、何の対策も施さないままそこらに置き続けるというわけにもいかないと思います。
結局のところ藁と同じ理屈で、元々表面に放射性物質が強く吸着していたものを大量に集めるとトンデモない放射能を持つ、ということになりますので。
場合によっては、いずれは東電に引き取ってもらう必要があるのかもしれません。
が、多分こんなもの、既にどっかに捨ててますよよねえ?! ^^;;;

ちなみに、例えば石巻市の各学校の放射線量調査に着目しても、ほぼ同じ結論が言えます。
http://www.city.ishinomaki.lg.jp/kyouiku/deta/gakkouhousyasenryousokutei/gakkouhousyasensokutei.jsp
この中では例えば石巻市立女子商業高校が7/29の計測で0.07μSv/h、大同様に大街道小学校が7/29の計測で0.07μSv/h、と、津波を受けなかった被害と比べてかなり低い値になっています。
でも、ここの校庭の泥、いったいどこにいったんだろ?! ^^;;;

ということで元の「三陸沿岸津波被災地で放射能対策は必要か?」という質問に対しては、「とりわけ特別な対策は必要ない」という結論になると思います。
ただ、低線量地域でも稲わらの濃縮のような思いもよらなかった害は起きていますので、例えば津波の泥を土嚢袋に入れて他の用途に流用した場合などには、稲わらと同じことが起きていないか、念のため線量を測ってみるなど、同様の注意は必要でしょう。

もう少し見直してよい、固形燃料の実力

温泉旅館でよく一人鍋用に出てくる固形燃料、以前に1合のご飯を炊くのにジャストフィット、と紹介しました。
色々実験してみたのですが、この固形燃料一つで500ml前後の水を沸騰させられるだけの熱量があります。
500ml!、意外に多い、と思いませんか?!
とは言え、固形燃料の熱量全部使って500mlフルの水を沸騰させるには、20分かかります。
おそらく冬場のクソ寒い避難所などだともっと条件は悪く、これより少ないと思います。
実際には、180〜250mlの水を、2〜3回に分けて沸かすことになるでしょうか。
固形燃料一つで1合の炊き込みご飯を炊いて、もう一つでスープあるいは味噌汁をつくる。
計算上は固形燃料二つあれば、大人二人が生き延びる分の食料が、なんとか賄えそうな計算です。
カップラーメン用のお湯を沸かすにも、固形燃料一つでなんとか二人分が確保できそうでしょうか。

ということでみなさんも是非、騙されたと思って防災袋の中に、固形燃料もお一つどうぞ。
100円ショップで3つ100円です。あ、もちろんですが、ケトルもしくはコッヘル、それと水も忘れずに。
をっと、もっと肝心なライターあるいはマッチも忘れずに。