三陸沿岸津波被災地で放射能対策は必要か?

元々今回の宮城県沿岸部の放射線の測定の目的は、津波被害を受けた地域の自治体が放射線対策の必要性を検討するにあたって、大学へ調査の要請があったためでした。
宮城県内で津波の被害を受けた地域は、津波被害からの復興対応で追われ、放射線のリスク評価はどうしても後回しになってしまう傾向にあります。
実際に被災地に行っても、悪臭やハエなどのリスクのほうが急務で、放射線に対するリスクなどにはとてもかまってる場合ではない、といったところが実情のようです。

このために検証したのが、気仙沼市本吉町大谷海岸のバス停前の測定です。
元データはこちらにありますが、URL長いな ^^;;;
http://geigerdata2.appspot.com/plotter?id=agtnZWlnZXJkYXRhMnIbCxITZ2VpZ2VyZGF0YV9wbG90dGVyMhiB-gEM

結果は、バス停前では0.07μSv/hと、他の沿岸部と比べても際立って低い値でした。
他に気仙沼の港で測った際も、気仙沼市街地の津波の被害に合わなかった地域に比べて、極端に低い値になるという結果でした。
ただし、大谷海岸気仙沼港も、モロに津波を被った場所です。津波の泥の上に放射性物質が降り注いだと思われますが、その泥は撤去されていると思われます。
この近辺の沿岸部の海岸近くで津波を免れた場所と比較すると、南三陸町神割崎駐車場0.09μSv/h、南三陸町歌津泊崎荘駐車場0.09μSv/h、といった具合です。

ではこの津波の泥はどうした?、この上に降り積もって吸着された放射性物質はどこにいった?
そこで試しにこの大谷海岸道の駅のバス停前にあった、土嚢袋に積まれた津波の泥をサーベイメーターで測ってみました。
すると、このすぐそばのバス停では0.07μSv/hという値だったものが、土嚢袋は0.15μSv/hと、比較的高めの値を示しました。
ただしこの数値に限って言えば、他の地域の圃場の放射性物質の吸着具合と比べると、それほど変わらない程度です。
この土嚢袋と同じ程度の放射線量の地域は、宮城県内でも普通に見られます。

ですので個人的には、津波の被害を受けた被災地は、津波の泥に放射性物質が吸着されて、その泥かきによりいわば「既に除染済み」なため、とりわけ放射線に対するリスクを心配する必要はないだろう、という意見です。
ただ、表面に放射性物質が吸着した泥を集めたこの土嚢袋を、何の対策も施さないままそこらに置き続けるというわけにもいかないと思います。
結局のところ藁と同じ理屈で、元々表面に放射性物質が強く吸着していたものを大量に集めるとトンデモない放射能を持つ、ということになりますので。
場合によっては、いずれは東電に引き取ってもらう必要があるのかもしれません。
が、多分こんなもの、既にどっかに捨ててますよよねえ?! ^^;;;

ちなみに、例えば石巻市の各学校の放射線量調査に着目しても、ほぼ同じ結論が言えます。
http://www.city.ishinomaki.lg.jp/kyouiku/deta/gakkouhousyasenryousokutei/gakkouhousyasensokutei.jsp
この中では例えば石巻市立女子商業高校が7/29の計測で0.07μSv/h、大同様に大街道小学校が7/29の計測で0.07μSv/h、と、津波を受けなかった被害と比べてかなり低い値になっています。
でも、ここの校庭の泥、いったいどこにいったんだろ?! ^^;;;

ということで元の「三陸沿岸津波被災地で放射能対策は必要か?」という質問に対しては、「とりわけ特別な対策は必要ない」という結論になると思います。
ただ、低線量地域でも稲わらの濃縮のような思いもよらなかった害は起きていますので、例えば津波の泥を土嚢袋に入れて他の用途に流用した場合などには、稲わらと同じことが起きていないか、念のため線量を測ってみるなど、同様の注意は必要でしょう。