仙台でうちの子が通う園庭の砂を測ってみた

前々から、うちの子が通っている園の環境も色々測ってみたいとは思っていたものの、園からのお便りで定期的に空間線量の測定結果もいただいていて状況はわかっているし、なかなか切り出す機会がなくて延び延びになっていましたが、たまたま園庭の砂をお借りすることができたので、ちょっと園庭の砂の放射性セシウムのベクレル数を測ってみることにしました。
とは言うものの、普通に測っただけでは「それで?、どうなの?」になるので、どういう測定をするといいか、色々考えてみた結果。。。
砂場の外にこぼれた土埃混じりの砂を持ってきて、そのまま測ったものと、洗って土埃を流した後に測ったものと、比べてみることにしました。

まずは、洗う前の砂です。通常は土壌の測定ですと乾燥させて測るのですが、洗った後と比較するため、水を加えしっとりとした状態で測りました。結果は、

試料1035g 134Cs:51Bq/kg 137Cs:55Bq/kg 放射性セシウム総量106Bq/kg

となりました。
仙台市近郊での家庭菜園の土壌はたくさん測っていますが、概ねこれと同程度の数値です。
ただ、これだけですと、安全なのか危険なのか、すぐには判断できないですよね。
ということで、砂の中に含まれる土埃を洗い流した後のものを測ります。
先ほど測った砂を洗面器に入れ、水を入れてかきまぜ流し、を何度か繰り返して、洗う水が澄んでくるまで5回ほど繰り返しました。結果は、

試料1051g 134Cs:31Bq/kg 137Cs:35Bq/kg 放射性セシウム総量:66Bq/kg

となりました。
本来は、水分の含有量がほぼ同じなら、土埃が流れた分、若干重量が減らないとならないのですが、このあたりは誤差の範囲内ということで ^^

結論としては、園庭の砂を洗って土埃を洗い流すと、放射性セシウムの量が2/3程度に減ることがわかりました。

さて、この結果をどう見ればいいのか?、ここからが本題です。
現在、土の中に含まれている放射性セシウムは、大きく分けて以下のような分類になります。

  1. 有機質に付着した、水溶性のもの
  2. 粘土質に付着した、難水溶性のもの
  3. 鉱物の雲母質に付着した、難水溶性のもの

この中で、1)は園庭の砂にはほとんど含まれていないと思われます。事故後1年経過して雨水にさらされていますので、すっかり溶けて流れてしまっているでしょう。
砂を洗った際に泥水として流れていったものは、ほとんどが2)のものと思われます。砂を洗った後の残りのものが、3)です。
2)や3)の放射性セシウムは、かなり強固に付着しており、水に溶かすには硝酸などの強酸を加えて熱しないと分離しません。

では子供が園庭で遊んだ際に、この砂に含まれる放射性セシウムが、どの程度の被曝量になるか?、これは、どの親御さんも心配されると思います。
この問題の概略は、いつもお世話になっている東北大学理学部物理教室原子核物理講座の金田さんの1年ほど前のblogに記載されてます。
が、改めて見積もってみましょう。

子供らが園庭で外遊びをして土を体内に取り込んでしまう量は、一日当たり0.2g、と見積もられています。
放射性セシウム総量で概ね100Bq/kgの園庭の砂ですので、単純に計算すると砂場遊びなどで体内に取り込んで内部被曝してしまう放射性セシウムの量は、仙台市の都市部だと一日あたり0.02Bq程度、ということになります。
最悪のケースとして、砂を洗った泥水の中に流れ出している放射性セシウムが全部水溶性のものと考えると、体内に取り込まれる放射性セシウムは一日あたり0.007Bq程度です。ただ既に述べた通り、実際には事故後1年経過して水溶性の放射性セシウムはほとんど雨で流れて残っていないと思われます。
残りの、粘土質や雲母質に吸着されている難水溶性の放射性セシウムは、仮に口に入れてしまっても消化吸収はされず、ほとんどそのまま便として排出されると思われます。
この程度の量でしたらリスクとしては極めて低く、またいくら子供でも自分から土を食べるということはないと思いますが、それでも心配な方でしたら、外遊びの後の手洗いやうがいといった通常の生活習慣のしつけでも口に入れてしまう土を減らすことができますので、リスクはかなり避けられると思われます。

参考までに、この砂を取った場所の地上1mの空間線量は、0.09μSv/hです。
最初この「実験」を行う際、この園庭の砂を全部洗ってきれいにすればこの空間線量がもっと減るのかな?、とも思っていたのですが。。。
事故前の仙台市での空間線量は概ね0.04〜0.05μSv/hでしたので、園庭の砂に付着している放射性セシウムの寄与は、0.04〜0.05μSv/h程度です。だいたい、自然の放射線原発事故由来の放射線と、半々くらいですね。
この砂を洗って付着している放射性セシウムの量を2/3にしたとしても、空間線量の寄与としては一部ですので、最終的には0.07μSv/h前後になるかな?、といったところです。
この程度の効果ですと、砂を洗うという労力に見合ったものと言えるかどうか、個人的にはかなり疑問に感じます。