今度の冬の薪も、課題は山積み

またまた川崎仙台薪ストーブの会の方から、貴重なサンプルを提供していただきました。

震災前に切り出され事故直後に雨にあたっていた薪の表面には、かなりの放射性セシウムが付着していることがわかっています。ただこの薪に関しては、木の表面の皮などの部分に付着していたため、薪割りの際などに皮をうまく剥いで使うと、出る灰の放射性セシウムの量が数分の一程度に低減されることがわかっています。

ただ、震災後以降何ヶ月間も雨さらしのままですと、放射性セシウムが木の内部までかなり浸透してきている可能性があります。
また、震災前に切り出された木ではなく、震災後に伐採された木についても、当初は幹の表面にしか付着していなかった放射性セシウムが、死んだ細胞である白木の内部まで浸透してきていることが考えられます。

そこで、色々な条件での薪をつくってみて、それを燃やした灰を提供していただき、測定してみました。

震災前に伐採され昨年の秋まで野積みにされていたコナラの木の、皮の部分を燃やした灰:

134Cs:3,500Bq/kg 137Cs:5,100Bq/kg 総量8,600Bq/kg

震災前に伐採され昨年の秋まで野積みにされていたコナラの木の、皮を剥いだ薪を燃やした灰:

134Cs:1,700Bq/kg 137Cs:2,700Bq/kg 総量4,400Bq/kg

宮城県の中でも比較的放射性セシウムの降下量が低かった川崎町の薪でも、皮の部分だけ燃やしてしまうとそのまま埋設処分可能な8,000Bq/kgの規制値を超えてしまう可能性が高いことがわかりました。
また薪の皮を剥いで使っても、しばらく野ざらしにされていた薪にはかなり放射性セシウムが浸透してきていることがわかりました。

一方で気になるのは、震災後に伐採された木に関しては放射性セシウムの影響がどうなっているか、です。
薪として使うには乾燥するのにかなり時間がかかるため、震災後に伐採された薪が使われるのは今度の冬以降になる例がほとんどと思いますが、ちょうど自然エネルギーを利用した乾燥器を活用して薪をつくっていただき、試験的に燃焼したサンプルを提供していただきました。

先日の春の強風で倒れた杉の木の白木の部分:

134Cs:2,300Bq/kg 137Cs:3,500Bq/kg 総量5,800Bq/kg

先日の春の強風で倒れた杉の木の表面の皮から年輪3年分ほどの部分:

134Cs:2,600Bq/kg 137Cs:3,100Bq/kg 総量5,700Bq/kg

直径30cmほどの樹齢30年ほどの杉だそうですが、かなり内部まで放射性セシウムが浸透しているらしいことがわかります。
また、皮の部分が白木より低いのが解せませんが、これは別々の木の皮と白木を持ってきてしまったせいかも、ということでした。

伐採したばかりのコナラの皮に近い部分:

134Cs:3,500Bq/kg 137Cs:5,200Bq/kg 総量8,700Bq/kg

伐採したばかりのコナラの中心部に近い部分:

134Cs:1,300Bq/kg 137Cs:1,600Bq/kg 総量2,900Bq/kg

これは、直径20cmくらいのコナラの幹を、薪割りする際に皮に近い部分と中心部分とに分けて燃やしたものだそうです。
やはり、皮だけを燃やしてしまうと8,000Bq/kgの規制値を超えてしまう可能性が高そうです。
ただ、震災後1年間生えていた木に関しても幹の内部までかなり放射性セシウムが浸透してきているらしいことがわかります。
薪全体の皮の量は比較的少ないことを考えると、これから伐採する薪に関しては、わざわざ薪割りの際に皮を剥ぐ手間は、労力の割にはあまり得られるものが少ないかもしれません。

いずれにせよ、自然の恵みを享受しながら暮らしていくには、これからおそらく何十年にもかけて放射性セシウムとお付き合いしていく必要がありそうです。
さて、気になるのは、この薪を燃やした灰の処分方法なのですが。。。
きれいな薪を注意して選びながら、でしたら、なんとか安全な形で薪燃料を使い続けていけそうな可能性はあります。
しかし、今年の冬の灰すらまだほとんどの自治体で決まっていないのに、いったいどうしたらいいんでしょうね?