宮城県三陸沿岸部の放射線調査の成果

今月最初に書いた、以下の宮城県放射線量調査のその後です。

[放射能]宮城県放射線量調査
http://d.hatena.ne.jp/kaztsuda/20110803/1312388582

元々は南三陸町から、津波で甚大な被害を受けて放射線の調査まで手が回らないから、と大学に依頼があったものですが、結果として牡鹿半島から気仙沼まで、宮城県沿岸部の放射能汚染は低く、概ね仙台市などと同じレベルかそれより低いくらい、ただし気仙沼の山間部で若干高い傾向が見られる、というものでした。

この結果を持って南三陸町の町長さんが青森県三戸町まで直談判に行き、「三陸沿岸部の放射線の汚染は低い」という科学的根拠を持って、南三陸町の大量のガレキの焼却処理を三戸町が引き受けてくださったそうです。

以下、宮城県の地元紙、河北新報のそのニュースです。
三陸のがれき一部 青森・三戸で処理 来週にも搬出開始
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110806_16.htm

宮城県南三陸町は、東日本大震災で発生したがれきの一部を、青森県三戸町の民間最終処分場で処理することを決めた。県の2次仮置き場が決まらず、町内の1次仮置き場が飽和状態となっているため、緊急的措置として実施する。来週にも搬出を始める。
 がれきは1次仮置き場で大まかに選別した上で運び出す。1日最大で150トンを見込む。
 震災前、南三陸町は一般ごみを気仙沼市で焼却後、灰を三戸町の処分場で処理していた。三戸町が業者を通じ、災害廃棄物の受け入れを打診していた。
 南三陸町では町内25カ所に1次仮置き場を設置した。環境省によると、同町のがれき総量は推計64万トンで、既に29万トンが運び込まれている。
 県は気仙沼・南三陸ブロックの2次仮置き場として、気仙沼市本吉町小泉地区を候補地に挙げたが、地元との調整が難航している。
 南三陸町の佐藤仁町長は「一部でも町独自でがれきを処理することで、小泉地区の負担軽減を図りたい」と話している。
2011年08月06日土曜日

放射性物質福島第一原発からどうやって拡散したかは、色々な研究者がシミュレーションを建てている最中ですが、その中には、放射性プルームが原発から太平洋上空を飛んできて牡鹿半島に上陸し、北上連峰沿いに三陸沿岸を北上して一関まで達した、というものもあるようです。
太平洋上空を飛んできたなんてどうやって確認したのか謎ですが、この結果が週刊誌や新聞などで何度か取り上げられているせいか、「三陸沿岸部の放射線汚染は酷い」、と誤解している人もいるようで、陸前高田の松の騒ぎになった?、のかと想像しております。
実測値でこのように放射能汚染は低いという結果が出ている、という科学的根拠をもってあたれば、他県の自治体に対しても十分納得していただくことができ、停滞しているガレキの焼却処理を進めることができたという例を知っていただけに、陸前高田の松の騒ぎは非常に残念な結果でした。

ところで南三陸町の近隣の市町村の各所についても、計測の途中で「あそこの牧場の牧草が放射能汚染で検査でひっかかった」という話を聞き、その牧場も実際に計測してきました。
実際にはこの牧場の空間線量は0.20μSv/hと、確かに平野部に比べると若干高いものの、それほど健康に害を与えるようなレベルではありませんでした。
おそらく土壌に降ったばかりのセシウムの牧草への移行係数が比較的高い(0.15程度)こともあり、新芽の牧草が運悪くひっかかってしまったのでは?、と想像しています。
しかし別の市町村でもその牧場の牧草が検査でひっかかったことは話題になっており、「あそこの牧草が放射能でひっかかった」→「あそこはかなり汚染されているに違いない」という話を実際に聞かされました。
「いや、その牧場に実際に行って測ってみましたが、確かに平地と比べると若干高いものの、たいした線量ではありませんでした」と説明はしてみても、すぐには納得してくれなさそうな様子でした。
一度付きまとってしまった噂を消し去るのは、並大抵の努力ではできないんだなぁ、と実感した次第です。