薪ストーブや風呂釜で、雨ざらしになっていた薪にはご注意を。薪の放射性物質が灰には200倍に濃縮されます。

マスコミなどでも報道されていますが、宮城県内の放射線量の高い地域で、薪ストーブの灰に放射性物質が非常に濃縮された例が報告されております。
twitterなどでつてをたどりながら、宮城県内各地から薪ストーブの灰のサンプルを集めてその放射性セシウム濃度を測定し、どういった薪の使い方をしていたか聞き取りしながら調査してみました。
その結果、原発事故で放射性物質が比較的多く降り注いだ地域にお住まいの、ストーブやお風呂などで薪燃料を使用しているご家庭では、震災後雨にあたっていた薪の使用は絶対に避けるべきであることがわかりました。
また薪を燃やした際に出た灰についても、放射性濃度が低い場合は家庭ゴミとして出せますが、畑に撒くことは絶対に避け、雨をかぶっていた薪を使用していた場合は国の指針が固まるまで、一斗缶など金属製の容器で密封し雨水などには触れない状況で保管していてください。

まず以下が測定結果、単位は放射性セシウム134Csと137Csの総量です。

  • 栗原市文字:30,000Bq/kg(灰、震災後山の中に置かれていた薪を使用)
  • 栗原市耕英:19,000Bq/kg(灰、震災後しばらく雨さらしになっていた廃材を使用)
  • 富谷町:6,000Bq/kg(灰、焚き付けに震災後雨さらしの廃材や小枝を使用)
  • 蔵王町遠刈田:5,500Bq/kg(灰、震災後雨を被った薪を使用)
  • 丸森町耕野:18,000Bq/kg (灰、震災後しばらく雨さらしになっていた薪を使用)
  • 丸森町筆甫:101,000Bq/kg (灰、震災後しばらく山の中で放置されていた薪を使用)
  • 丸森町筆甫: 27,000Bq/kg (灰、屋内保管の薪と山元町で雨さらしになっていた薪を使用)
  • 丸森町筆甫: 12,000Bq/kg (煤、屋内保管の薪と山元町で雨さらしになっていた薪を使用)

測定に当たっては、試料を100mlのU8容器に入れ、1inch NaIスペクトロサーベイメーターを用い、東北大学ゲルマニウム半導体検出器で校正を行っております。

環境庁からの指針で、最終処分場に埋設可能な焼却灰の規制値は放射性セシウム総量で8000Bq/kg以下に設定されております。
しかし、宮城県内で比較的線量の高い北部と南部の地域で、震災後屋外で雨を被ってしまった薪を使用していると、薪ストーブで焼却して出る灰の放射性セシウムの量は、この規制値は軽く超えてしまっています。
通常の生活を行う上では特別な対策の必要のない仙台市近郊でも、薪の状況によっては8000Bq/kgを超えかねない状況です。
例えば富谷町のお宅の例では、薪自体は2年前に伐採された木を雨の被らない軒下に乾燥保管していたものでほとんど放射性物質が付着していないと思われますが、焚き付けに庭に放置していた小枝や廃材を用いており、これだけでも6,000Bq/kgに達してしまいました。
最後の例では、灰だけでなく、煙突に付着する煤にも放射性セシウムが含まれていることがわかりました。
煤は灰よりも軽いこともあり、サーベイメーターではあまり反応はありませんが、重量あたりに直すと灰の半分程度まで放射性セシウムを含んでいるようです。
また同様に放射性セシウムは、煙としても外部に拡散されているものと思われます。

また、農業や家庭菜園を行っているばあい、薪の焼却灰はよいミネラル分になるため、肥料として畑に撒くことが多いと思いますが、この際に肥料に使える規制値は400Bq/kgに設定されております。
肥料は繰り返し施肥されるものなので、食品より高い規制値が設定されております。
これらの灰はどれも、肥料としても全く使えないものばかりです。
特に灰ですと、セシウムが水に非常に溶けやすい状況になっておりますので、畑に撒いたりすると容易に再拡散が始まってしまいます。

これだけアブナイことになっているのに国からは何も指針や規制は出ていないのか、実は既に通達が出ております。
林野庁が実験したところ、薪の放射性物質の濃度が燃やした後に灰になると200倍に濃縮するという結果になりました。これを受けて、焼却灰が8000Bq/kgを超えないための薪の規制値として40Bq/kgが設定され、これを超える薪の生産や流通や使用を控える旨の通達が11/2に出ております。
この40Bq/kgという規制値は、食品に比べてもかなり厳しいものですが、薪の状態では全く問題ないものでも、燃焼の際に200倍にも濃縮してしまうという事情から設定されたものです。
詳しい経緯などは、以下の林野庁のweb siteをご覧ください。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shihyouti-index.html

またこの際、キノコ栽培の原木に使用できる規制値も150Bq/kgに設定されました。
これに伴い、先日11/30に宮城県が県内の一部の地域の原木を検査し、その結果が林業振興課のホームページで公開されております。

http://www.pref.miyagi.jp/ringyo-sk/

この結果では原木キノコの規制値に合わせて検査されておりますが、薪の規制値に読み替えてみますと、宮城県内のほとんどの地域で生産された薪に関して、使用を慎重に行わなければならないことがわかると思います。
各地域の薪を薪ストーブの燃料として使った場合、この放射性セシウム濃度の200倍したものが薪ストーブの灰として検出される、と考えると、今回の調査結果とほぼ一致しています。

参考までに、サーベイメーターで簡便に8000Bq/kgを超えるかどうか判断する基準を調べてみたところ、灰を1kgほどビニール袋に入れたものの上にサーベイメーターを直に置いて測定した場合、空間線量に比べて0.20μS/hを超えると要注意、ということがわかりました。
例えば、部屋の中の空間線量が0.05μSv/hだった場合、灰に直置きして測ってみて0.25μS/hを超えるようだと、8000Bq/kgを超えている可能性が高いです。

繰り返しますが、原発事故で放射性物質が比較的多く降り注いだ地域にお住まいの、ストーブやお風呂などで薪燃料を使用しているご家庭では、震災後雨にあたっていた薪の使用は絶対に避けてください。
また薪を燃やした際に出た灰についても、放射性濃度が低い場合は家庭ゴミとして出せますが、畑に撒くことは絶対に避け、雨をかぶっていた薪を使用していた場合は国の指針が固まるまで、一斗缶など金属製の容器で密封し雨水などには触れない状況で保管していてください。