堀場 PA-1000 Radiの使い方

堀場 PA-1000 Radi、今回の震災で放射線対策として宮城県がまとめて購入した機種で、各市町村の小中学校や幼稚園などに配布されているようです。
シンチレーター式のサーベイメーターの中では比較的安価で使いやすい機種という評判です。
今回の沿岸部の測定で、同行していただいた南三陸町の職員の方がこの堀場PA-1000 Radiを使っていて、こちらのアロカTCS-171と比べながら測定したのですが、使っている様子を見た限りではちょっとクセがあるようで、アロカTCS-171と比べて値がバラつくことがありました。
ですので、ちょっとこの機器の正しい使い方について書いてみます。

宮城県ガイドラインでは、以下のように測定するよう、となっているようです。
(実際に通達を見たわけではないのですが、複数の方から確認しました)

  1. スイッチを入れ、値が安定するまでしばらく待つ
  2. ストップウォッチで30秒間隔で5回値を記録する
  3. 5回の値の平均を取って、小数点以下3桁目を四捨五入した数字を採用する

が、どうもこの通りに使っていない市町村があるような感じですので、改めてカタログひっくりかえしてみました。

1)の「値が安定するまでしばらく待つ」という動作ですが、とても重要です。
感度は1μSv/hあたり1000cpm相当と、安物のポケットガイガーの10倍程度の感度の性能ではあるのですが、0.1μSv/h程度の低線量域ですと1秒間にキャッチするγ線が2個程度ですので、数十秒くらいでは統計的に十分な量のγ線をカウントできていませんので、値がふらつきます。
南三陸町の職員の方も「なかなか値が安定しない」とぼやいており、安定しないうちから計測開始していましたが、安定しないのは放射線の心配があまりない低汚染地域ならではの悩みですので、できれば数分ほど我慢して安定するまで待ってください。

2)の操作ですが、これもふらつきを平均化するという意味では重要な操作です。
ただこの機種、時定数が60秒で固定なのですね。だとすると、厳密には30秒おきに5回測るうち、真ん中の3回はダブルカウントしていることになります。
ただ、元々の目的が目安として使うものですので、それほど気にする必要もないでしょう。
個人的には、時定数60秒固定なら、その直前60秒間の平均を出しているので、値が安定してから1分おきに3回測るのでも同じことでは?、と思います。これなら計測開始後2分で撤収できます ^^ が、このあたりはガイドラインに沿ってください。
もちろんですが、60秒おきに5回測ったほうがより精度がよいことは確かです。
あと、10秒おきに値を更新するので、60.00秒きっかりに測る必要もなく、63秒くらいの時点でも値が変わる前なら大丈夫です。

あとついでに、5cm、50cm、100cmの高さで測る際は、最初にその環境に慣らして値が安定していれば、どの高さでもあまり値は変わらないはずですので、最初は5分間慣らしが必要だったとしても、次の高さではそう何分も経たずに値が安定します。ですので、どの高さでも必ず5分間程度の慣らしが必要なわけではなく、値が安定してきたらすぐに計測にかかってかまいません。

3)の操作ですが、「有効数字」という考え方なのですが、小数点以下3桁の最後の数字は、この機器が測れる精度以下で誤差にまみれてほとんど意味のない数字ですので、四捨五入してしまいます。
もったいないようですが、全然信用できない数字ですので、こういう操作をします。

「うちの学校、ちゃんと測ってるのかな?」と心配でしたら、目安として発表される数字が小数点以下何桁まで書いてあるか、一つのバロメーターになります。
例えば0.127μSv/hのように、3桁まで書いてあったりすると、きちんとガイドライン通りに計測していない証拠です。と、週刊誌などでよくこういう数値、 見ますけど ^^

線量計は、単にスイッチを入れて値を読めばよい、というわけではないのです。
こういった面倒な操作をしなければならないのは、ちゃんと以上のような理由があります。