内部被曝と外部被曝と、どちらが恐い?

先日の東北大理学部物理教室の田村裕和先生の出前授業で解説された、内部被曝外部被曝定量的に比較した内容です。

若干、数字を仙台市内に合わせてアレンジして、原発事故由来の放射線外部被曝原発事故由来の放射性物質を含む食物を摂取することによる内部被曝と、リスク評価を定量的に比較してみます。
リスク評価としてはICPR勧告の、100mSvの被曝量で生涯致死発癌率が、50歳で0.5%、10歳で2%上昇、100mSv以下の被曝量では閾値無しで比例する、という方式をここでは採用します。
「いや、それは間違っている!」と主張される方もいらっしゃると思いますが、すみませんが勉強不足のわたくしは定量的に評価する方法を知りませんので、適時置き換えて計算してみてください ^^;;;;

外部被曝
現在の空間線量は0.12μSv/h、事故前の空間線量は0.05μSv/hとします。
汚染度としてはかなり低く、原発事故直後でも外出時にマスクなどする人などほとんどいなかったレベルのものです。
一日の中で8時間屋外で活動し、残りは屋内で過ごす、屋内の線量は屋外の半分、とします。
年間の総被曝量は

(0.12-0.05) (μSv/h) × ( 1×8 + 1/2 × 16) × 365 = 0.41 (mSv)

これはICRP勧告のLNT仮説に基づくと、10歳の子供に対する一生の間の致死発癌率を0.008%上昇させるリスクに相当します。

内部被曝
食物の放射性セシウム総量の基準値は500Bq/kgですが、この1/10に相当する食物を毎日0.6kg食べ続けるとします。
134Csと137Csの割合は1:1でそれぞれ25Bq/kgづつ。
現在流通している食物のほとんどは数Bq/kg以下の「不検出」の多い中、基準値以下ではあるものの「ちょっと気持ち悪い」レベルの汚染度を仮定します。
ちなみに小さめのお茶碗一杯分のご飯が110g、大きめのお茶碗のご飯が150gだそうです。

また、経口摂取の場合の実効線量計数を134Csが1.9×10-8 Sv/Bq、137Csが1.3×10-8 Sv/Bqとします。

年間の総被曝量は、

( 25 (Bq/kg) × 1.9×10-8 (Sv/Bq) + 25 (Bq/kg) × 1.3×10-8) ×
0.6 (kg) × 365 = 0.18 (mSv)

これはICRP勧告のLNT仮説に基づくと、10歳の子供に対する一生の間の致死発癌率を0.0036%上昇させるリスクに相当します。

外部被曝内部被曝のリスク比較:

実はここで、外部被曝のリスクはかなり低め、事故と関係なくてもこの程度の空間線量の場所は西日本でも普通に存在する、程度の数字を想定しています。
その一方で、内部被曝のリスクはかなり高め、「1ベクレルであっても身体に入れるのはイヤ」という人のために可能な限り汚染度の低いお米をつくろうと努力している状況で、これだけの米が検出されることはめったにないような高い数字を想定しています。

にもかかわらず、外部被曝のリスクは、内部被曝の倍という計算結果なのです。

実際には外部被曝内部被曝も、両方ともあまりにも低いリスクなので見落としていましたが、こうやって比較してみると目から鱗でした。