家庭用ポケット線量計で堆肥の放射性セシウムの汚染具合を調べる

混乱している割に正確な情報はなかなか得られなくて困っている放射能汚染問題です。
震災時、野積みしていた腐葉土や、田んぼに敷きっぱなしだった藁から由来する堆肥など、知らないで買ってしまったが使ってよいものかどうか迷っている人も多いと思います。
色々と調べた結果、概ね0.03μSv/hの精度で空間線量を測定できれば、震災時の土壌汚染と比べて堆肥の汚染のほうが酷いかどうかを調べることができそうです。一般的にこの精度が要求される際はシンチレーション方式の線量計が必要となります。数万円程度の値段で買えるGM管を用いたサーベイメーター(いわゆる「ガイガーカウンター」)ではちょっと厳しい条件ですが、機器の特性をうまく利用すればうまく検出できる場合もあります。
ここでは、その方法について解説します。

まず、以下の二つの場所の空間線量を、地上1mの位置で測ります。
A-1:震災後に耕起してしまった畑、もしくは田んぼ、地上1m
B-1:震災後に一度も耕起されていない休耕田など、地上1m

次に同じ場所で地上5cm程度の位置で測ります。
A-2:震災後に耕起してしまった畑、もしくは田んぼ、地上5cm
B-2:震災後に一度も耕起されていない休耕田など、地上5cm

Bは、できれば何も栽培されていないほったらかしの休耕田がよいですが、牧草を栽培していて肥料を撒いている場合は、肥料を撒いた場所はなるべく避けてください。
「近所には畑も田んぼもないよ!」という場合は、しかたがないのでAに舗装された道路、Bには土の公園や庭、というような条件で測ってください。
Aは、耕して表面にあった放射性物質が地中に撹拌されてしまい、原発事故由来の放射性物質が地表表面にほとんど残っていないので、汚染がなかった場合のシュミレーションになります。その一方でBが、原発事故により飛来した直後の地表に放射性物質が残っている場所のシュミレーションになります。

A-2,B-2では測定場所を数cm移動させただけでも、表面にまだら状に分布している放射性物質のせいで値がメチャメチャ変わることがあります。ですので、なるべくたくさんの場所を測って平均化させてください。それが面倒なので、公式な測定では1mの場所を測ることになっているのですけどね。
また、5cmというのはテキトーな数字なので、条件さえ統一されていれば3cmでも10cmでも測りやすいところでいいです。

シンチレーション式のサーベイメーターを使った際はガンマ線しか拾わないので、A-1もA-2もほとんど全く値は変わりません。B-1とB-2も同様にほとんど同じ。同じじゃない場合は平均化が不十分と思ってください。A-1もB-1もちゃんと測れているならA-2やB-2は測定する必要ないです(←まずそれを言えよ)。
ちなみに宮城県の汚染度合がさほどでない中央部や北部の地域では、A-1とB-1の差は概ね0.03μSv/hでした。

安価なポケットガイガーの場合、A-1とB-1とほとんど差がわからない場合もあります。
そこで、土壌の表面に接近させたA-2とB-2を比較します。β窓があるGM管の線量計の場合は最初は閉じて測ったほうがいいですが、どうしても差がわからないなら、β窓を開けて積極的にβ線を拾い、なるべく精度よく測ってください。

最終的に、目隠しで場所がわからずに測っても、A-1とB-1、もしくはA-2とB-2、どちらで測った値か判別できるという自信がつくまで徹底的に測ってください。どうしても差異がわからないレベルなら。。。すみません、その線量計は粗悪品なので、迷わず捨ててください ^^

そして、AとBの空間線量の違いが判別できるなら、以下のCの線量を測ります。

C-2:調べたい堆肥の袋や表面から5cm

5cmという数字はテキトーで、どちらかと言えばA-2とB-2の条件と必ず合わせてください。
C-1という条件が要らない理由ですが、A-1とB-1と同じ条件で測るにはできるだけ多くの試料を一面に広げているという環境が必要になり、ちょっとハードルが高いためです。
A-1とB-1の測定だけで両者が十分判別できた場合は、このC-2の条件はなるべく表面に近づけるという意味になります。
このC-2の値が、A-2またはA-1に近い場合はそれほど汚染は無し、B-2またはB-1に近い場合は土壌と同程度の汚染具合、B-2またはB-1より大きな場合はなんだかのメカニズムで濃縮が起きている、ということになります。